猫が踊る伝説の町「踊場」を歩く

踊場モニュメント

横浜市の市営地下鉄「ブルーライン」で横浜駅から30分ほど下ると踊場(おどりば)という名の駅があり、周辺には風情豊かな公園やお散歩スポットがあります。

そしてここには、その昔、「猫たちが夜な夜な踊っていたという伝説」(後述)があって、踊場という地名はないものの、駅名の由来となりました。猫好きのあいだではちょっとばかり有名な町でもあるのです。

古くから残るこの猫伝説を知ると、私はこの踊場周辺の風景から踊る猫の残像を探し出したいと思うようになりました。このホームページでご紹介する公園や散歩スポットは、そんな猫探しの小さな旅のなかでめぐり会ったものです。

踊場駅で見た「踊る猫の伝説」

踊る猫2

その昔、相模の国(神奈川県)の戸塚の宿に水本屋という醤油屋がありました。商売柄手が汚れやすいのでたくさんの手ぬぐいを毎晩洗濯して物干しに干しておりました。

毎晩なくなる手ぬぐい

しかしのの手ぬぐいが夜毎、なぜか一本ずつなくなるのです。そこで不思議に思った店の主人が、手ぬぐいに紐をつけ、その端を自分の手に結んで床に入りました。

すると夜中、その紐が引っぱられ、誰かが手ぬぐいを持っていこうとしております。そっと紐の先に目を移した主人の目に映ったのは、なんと家で飼っている猫のトラでした。

そのまま手ぬぐいをくわえて逃げていくトラを追いかけましたが、追いつけずに見失ってしまいました。

飼い猫トラの秘密

つづく夜もやはり手ぬぐいがなくなっていきました。猫のトラが一体何のために手ぬぐいを持っていくのだろう?と主人は気になる一方です。

踊る猫たち

しかしある日のこと、となり町で開かれた宴会から帰るとき、村はずれの小高い林の中から話し声が聞こえてきたので、そっと近づいてみました。

覗いてみると、何匹もの猫が林の中の広場に集まっていました。そしてその中の何匹かが手ぬぐいをかぶっているではありませんか。

「師匠がまだ来ないねえ。」
「今夜こそ上手に踊って、師匠から手ぬぐいをもらおうと思ってたのにぃ。」
「師匠がいないんじゃ面白くないなぁ。」

しばらくすると、頭に手ぬぐいをのせた猫が、
「ごめん、すっかりおそくなっちゃった。」と走ってきました。

主人は、びっくりしました。自分の飼っているトラが猫たちの踊りのお師匠だなんて。

そしてトラが踊ると、ほかのネコたちも、一緒に踊りはじめました。主人は猫たちに気づかれないようにその場をはなれました。

主人はなくなった手ぬぐいの謎がわかってホッとするとともに、自分の家の猫を誇らしく思うようになりました。しかしそれからしばらくすると、猫の踊りの話が町のうわさになり、見物に行く人がふえるようになりました。

人間に知られてしまったら…

踊る猫1

すると敏感な猫たちはそれに気づき、その場所で踊るのをやめてしまい、トラもしばらくすると戻ってこなくなりました。

主人は町の人たちと話し合い、猫の踊っていたところに供養碑をたてました。猫の踊りの話は代々語りつがれて、今でもそこは「踊場」と呼ばれております。

.....

と、こんな話です。猫が踊っていたという話にも諸説ありますが、この「踊場」という通称の由来にはまったく猫が出てこない話も残っているようです。どちらにしても私の中ではかわしい猫たちが踊っているイメージしかありません。

踊場駅という駅名の由来

念仏供養塔

踊る猫の伝説を由来とする「踊場」というこの地の通称は、駅名として反映されたものの、実際の地名には使われておりません。ちなみに駅の所在地は横浜市泉区中田南1丁目です。

さて、駅の2番出口のそばに南無阿弥陀仏と彫られた「念仏供養塔」(写真)があって、これが猫の霊を供養するためのものらしいのです。そして「踊場」の由来については、『踊場の地名は伝説として古猫が集り毎夜踊った〜』と、ここにくわしく書かれています。

念仏供養塔の脇にある立て札

念仏供養塔の脇にある立て札です。

(写真をクリックすると別画面で拡大されます)


「踊場」〜 モニュメントで伝説を語る駅

踊場駅4番出口のモニュメント

ブルーライン(横浜市高速鉄道1号線・3号線)は、神奈川県藤沢市の湘南台駅から関内駅、横浜駅、新横浜駅を経由して横浜市青葉区のあざみ野駅までを結ぶ地下鉄です。

湘南台駅〜関内駅間が1号線、関内駅〜あざみ野駅間が3号線です。写真左は、踊場駅4番出口のモニュメント。

所在地:横浜市泉区中田南1-2-1

気付きにくい!遊び心たっぷりのモニュメント

踊場駅はこのブルーライン全32駅の中のひとつで、「関東の駅百選」に認定されております。駅の中にはこの地の伝説にちなんだ、いろいろな猫のモチーフが施されております。私の気付いた範囲でご紹介しましょう。もしかしたら、まだ隠れている猫がいるかもしれません。

通路の壁に描かれた猫の目

通路の壁に描かれた猫の目

壁に描かれた巨大な猫の目についても、教えてもらうまで気が付いていませんでした。遠めに撮った写真で見ると分かりますが、近くからはちょっと…。普通に正面を向いて歩いてるとまったく分からないです。


この通路は何十回も通っていたのに。分かる人にしか分からないというのが猫っぽくていいですけど。改札から4番出口に向かう通路では、ぜひ左を向いて歩いてくださいね。

通路の天井で発見した踊り猫

通路の天井で発見した踊り猫

これは教えてもらわなければ、98%分かりません。地下通路で真上を見上げながら歩いている人はいませんから。

これも4番出口に向かう階段の途中(まさに踊場)の天窓にあります。遊び心たっぷりのこのモニュメント。特徴はなんと言ってもこの「気付きにくさ」です。伝説の猫は簡単に見つかりません。

改札を出て正面にある、3番出口に向かう階段を上ると、楽しく踊っている猫を発見。

踊場駅の3番出口の2つの天窓は、外から見ると2つの3角形、いや、これは猫の耳ではありませんか?


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